うつ病の治療
うつ病の治療では、まず休養を大切にします。十分に休養しつつ、医師と相談しながら治療方法を検討します。
症状の現れ方や原因は人それぞれですので、医師と相談しながら、患者にあった治療方法、治療計画を作っていきます。
治療方法には、脳に直接働きかける薬物療法、考え方(認知の歪み)を改善する認知行動療法、ストレスを軽減させるための環境調整といったものがあり、うつ病の原因の3要素である脳、考え方、ストレスそれぞれに対する治療方法が確立されています。
また、最近、職場の環境調整や生活習慣がうつ病対策として注目されています。
こうして、うつ病の治療では、患者の体質的な要因と環境的な要因を治療していきます。うつ病は心の病気であると同時に体の病気でもあります。その両面を見ながら、長い目で治療することが大切です。=>うつ病は長い目でみた治療が必要です
休養
うつ病の人を発症した人は心も体も疲れ切っています。
うつ病の人は罪悪感を感じて休もうとしません。周りの人が説得して休養を取らせるようにしましょう。うつ病の急性期では休養することで、失われた心身のエネルギーがじっくりと回復していきます。
休養を取ると急速にうつ病が改善するケースが多く見られます。まずは休養です。
ただし、一般的な「気分転換」はうつ病に悪く作用することがあります。周りの人は、無理に旅行や遠出に連れ出さないようにしましょう。また、根を詰める作業はできるだけ避けましょう。昔好きだった趣味を無理やり始めるのも避けましょう。症状が重い時は、どんなことでも負担に感じるものです。
薬による治療
うつ病の薬による治療は抗うつ薬が中心です。
うつ病になると、神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリンなど)が減ってしまいます。抗うつ薬は、神経伝達物質を増やす効果があります。抗うつ薬の詳細はこちらです。=>抗うつ薬
特にうつ症状が非常に強い場合は、まず抗うつ薬による治療が必須とされています。
場合によって、抗不安薬や睡眠薬を使うこともあります。いずれにせよ、医師の処方を守って使用しましょう。
認知行動療法
うつ病の人は日常生活に支障をきたすほどの不合理な考え方になってしまいます。こういう考え方は認知の歪みと呼ばれています。認知行動療法は認知の歪みに注目しながら気持ちをコントロールし考え方を改善するものです。特にうつ病の症状が慢性化している人向けの治療方法です。認知行動療法の詳細はこちらです。=>認知行動療法
職場の環境調整
最近では過酷な職場がうつ病を誘発しているとしか思えないケースが少なくありません。その場合は、勤務の仕方を考える必要がありますが、実際は困難なことが多いようです。
とはいえ、うつ病の治療には休養が必要です。しかし、会社に伝えるのが難しいという方もいると思います。
きちんと休まないととうつ病は治りません。思い切って会社に伝えましょう。会社への伝え方はこちらを参考にしてください。=>うつ病と休職
しかしながら、職場の環境調整には、職場側の協力が不可欠です。
私の場合は、会社の方で私の様子がおかしい事に気づき、病院に行くよう勧めてくれました。
会社によっては産業医がいるので環境調整を相談するのもよいでしょう。産業医は本人と職場の間に立っていろいろな助言してくれます。
生活習慣改善
睡眠
よく眠れない人はうつ病の発症率や再発率が高いと言われています。よく眠れるようになればうつ病は抑えられると考えられています。
よく眠るためのコツはこちらです。
- 朝の光を十分に浴びる
- 音楽や入浴でリラックス
- 眠くなるまで床につかない
眠れないのに布団の中にいると、寝ようとする気持ちばかり焦り、結局眠れなくなります。眠くなってから床につくことが大切です。
運動
運動の習慣がある人はうつ病の発生率や再発率が低いと言われています。
うつ病の治療中の方は重症のうちは無理して体を動かす必要はありません。症状が軽くなってきてからは、積極的に体を動かすとうつ病の回復が早まることが分かっています。
出来る範囲で無理なく体を動かすことが大切です。
アルコールはNG
一見、お酒はストレス解消にいいと思われるかもしれません。
ところがアルコールを飲むことにより、
- 睡眠の質が悪くなり、生活のリズムが乱れる
- 薬の副作用が強まる
というリスクがあります。ひどくなるとアルコール依存症になってしまうこともあります。
長い時間をかけても治らないことがある
うつ病の治療を長い間続けていも治らないことがあります。
アメリカで行われた大規模調査によると、薬物療法や認知行動療法を行って症状がなくなった人は67%で、33%は1年以上経っても症状がなくならなかったそうです。
うつ病が治らない要因には次のようなものがあります。
- 薬が正しく使用されていない。
- ストレスの多い環境の対策がされていない。
- うつ病につながる考え方のくせが抜け切れていない。
- 双極性障害の可能性がある。
- うつ症状を伴う他の精神疾患(不安障害や統合失調症など)の可能性。
うつ病の治療は長い目で考えることが必要です。折にふれて、医師に自分の環境面を含めた状況を正直に伝え、治療方針を確認しながら治療を続けていくことが大切です。
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